第145章

大島莉理は父の背中を見つめ、深くため息をついた。父には、過去の影にいつまでも沈んでほしくない。だから小走りで追いついて腕にしがみつく。

「お父さん。お父さんが若い頃いちばん好きだったバンド、明後日こっちで公演するんだって。友だちに頼んでチケット2枚取ってもらうから、お母さんと一緒に行こう? ね?」

大島の父は、もう若い頃のように何にでも胸を躍らせる人間ではなくなっていた。それでも、娘の気持ちを無下にはできない。

「……お前の言うとおりにする」

隣で見ていた大島の母は、胸の奥がきゅっと痛んだ。夫が感情の渦に沈んでいくのは見たくない。だからこそ、笑顔を作って口を挟む。

「やっぱり娘は気...

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